研究概要 |
【目的】(1)季節性感情障害(SAD)に罹患することが社会恐怖(SP)発症の誘因となるか、もしなるとすれば(2)SP発症予防に有効な対策は何か。これら2課題を解明すること、あるいは少なくとも解明の糸口を見出すこと。 【対象と方法】(1)平成18年度山口大学新入性を対象とし、Global Seasonality Score(GSS)とLiebowitz Social Anxiety Scale(LSAS)を実施した。罹患率を求めるためGSS得点13点以上(高GSS群)は全員を、12点以下(低GSS群)は40名から高GSS群数を引いた人数を無作為に抽出して構造化面接を実施した。面接結果から、(2)SADとSPの罹患率・併病率・発症年齢ならびに重症度を比較した。 【結果】(1)対象学生2,011名中、1,627名が回答に応じた。高GSS群29名中26名と低GSS群11名中10名が構造化面接に応じ、3名がSAD(別にSAD疑い3名)・19名がSP(全般性3名・寛解例1名含む)と診断された。SADの全例がSPを合併していたが、2例は全般性であった。その2例のSAD・SP発症はほぼ同時期であったが、いずれも大うつ病エピソードの前に軽躁病エピソードを経験していた。(2)対象学生のLSAS総得点は47.8±23.8で、恐怖感/不安感総得点ならびに行為状況恐怖感/不安感得点とGSS得点とに弱い正の相関が認められた。SADとSPの罹患率は、それぞれ0.18%(SAD疑いを含むと10.1%)と1.06%であった。χ二乗検定では、SADが有意にSPを合併しているとはいえなかった。 【考察】大学新入生のLSAS得点は予想以上に高値であった。GSSでSPが抽出される背景には、GSSとLSAS(対人場面での恐怖感/不安感)とに正の相関があるためと判明した。SADが全般性SPを合併する理由として、軽躁と抑うつの心的落差が関与している可能性が推測された。
|