本研究は、実験動物を用いた基礎的研究を行い、溺水による血液浸透圧の変化によって脳の室傍核と視索上核の神経細胞が活性化され、神経細胞内に空胞が形成されることを実証する。溺水に特徴的な神経病理所見を確立し、法医解剖での死因診断へ役立てることを目標としている。 1)ラットを全身麻酔し、気管を切開してチューブを挿入し、気道内に蒸留水または海水を注入して溺水状態とした。肺臓の組織標本を作製して肺水腫を確認した。 2)溺水ラットの心臓血を採取し、採取した心臓血についてマイクロプレートリーダーシステムとELISAキットを用いたバゾプレッシンの定量を行った。 3)リン酸緩衝化生理食塩水で還流固定したラットの脳から視床下部を切出した。切出した視床下部をホモジナイズして試料とし、高速液体クロマトグラフィーを用いたカテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン及びドーパミン)の定量を行った。 4)蒸留水による溺水と海水による溺水での血中バゾプレッシン濃度と脳内カテコールアミン濃度の異同を検討している。また、溺水による視床下部神経細胞の組織学的な変化を検討している。
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