研究概要 |
目的:サルの系において,造血幹細胞移植前後で副甲状腺ホルモン(PTH)を投与し骨芽細胞を刺激することによって,移植後の造血幹細胞の生着促進効果を明らかにする.そのために平成19年度は,ポジティブ・コントロール2頭目のサル移植実験を実施した.すなわち,骨芽細胞への分化能をもつ間葉系幹細胞 (MSC)を共移植することによって造血幹細胞(CD34^+細胞)の生着促進効果を検討した. 方法:共移植するMSCは,サル骨髄血中の付着性単核球を用いた.CD34^+細胞は二等分した上で,それぞれを異なるレトロウイルスベクター(G1NaとLNL6)を用いて遺伝子標識した.レシピエントのサルには,あらかじめブスルファン(8mg/kg)を1回静注することによって移植前処置を施行した.サル自家移植の系で,同一個体の左右別々にヘミ移植を行った(個体差の影響を排除するため).すなわち,右側には造血幹細胞(LNL6で標識)とMSCを骨髄内に直接,共移植した.左側にはコントロールとして造血幹細胞(G1Naで標識)のみを骨髄内に移植した.移植後の造血について,共移植群(LNL6標識)と単独移植群(G1Na標識)のどちらに由来するか判定した. 結果・考察:昨年度実施した1頭目も本年度実施した2頭目も,移植後のコロニーアッセイによって,共移植群が単独移植群に比べて数倍の生着効率を示した.サルを用いた実験から,MSCを造血細胞と共に骨髄内へ直接移植すると,造血細胞の生着を高められることを示した.来年度以降は,PTH投与によって,ポジティブ・コントロール実験結果に匹敵する生着促進効果が見られるかどうかを検討したい.
|