研究概要 |
膠原病を中心とする全身性自己免疫疾患には自己細胞成分と反応する多彩な自己抗体が検出される.これらの自己抗体は臨床像と密接に関連し,診断,病型分類,予後推定など臨床的な有用性が高い.一方,自己抗体の対応抗原(自己抗原)は生命現象に必須の酵素や調節因子であることが明らかにされてきた.申請者は7SK-RNAを沈降する新たな自己抗体を見出し,昨年度までにこの抗体が7SK-RNAに結合する35kDa蛋白を抗原エピトープとすることを示した.本研究では,この7SK-RNAを沈降する自己抗体の真の対応抗原を同定し,自己免疫疾患における意義を検討することを目的とした. 1.7SK-RNA結合蛋白をコードするcDNAのクローニング: 昨年度までの検討で,申請者らは7SK-RNAを免疫沈降する患者血清の多くが,共通する35kDa蛋白を認識することを見出した.そこで,HeLa細胞mRNA由来・gtll cDNAライブラリーを用い,7SK-RNA沈降患者血清をプローブに用いて自己抗体が認識する蛋白成分のcDNAクローニングを試みた.いくつかの候補cDNAが選択され,cDNAより大腸菌に発現させた融合蛋白よりアフィニティ精製した患者血清IgGは,HeLa細胞抽出物から7SK-RNAを免疫沈降することを確認した. 2.抗7SK-RNP抗体の臨床的意義の検討: 年度内に受診した約500例の新たな膠原病およびその疑い患者の血清を用いて,RNA免疫沈降法およびRT-PCR法で7SK-RNAを免疫沈降する患者血清を新たに5例確認した.これらの患者は関節リウマチおよびシェーグレン症候群の患者であった.以前の10例の陽性患者と総合し,本抗体は関節リウマチとシェーグレン症候群に見いだされる自己抗体であることが推定された。
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