研究課題
萌芽研究
比較ゲノム学的検討は、形態形成遺伝子の時期・部位特異的な遺伝子発現を規定する遺伝子配列を同定するために効果的な方法であると期待されている。種間で高度に保存された非翻訳領域(Conserved non-codingelement、以下CNE)の配列が候補領域と考えられる。本研究では、Townes-Brocks症候群の原因遺伝子SALL1の遺伝子内のCNEの系統的な検討を行った。CNEに相当するDNA断片をGFPと最小プロモータを有するレポーターカセットに挿入し、初期ニワトリ胚(gastrula期,neurula期,pharyngula期)にエレクトロポレーション法によって遺伝子導入した。平成18年度の研究により複数のCNEについて検討を行った結果、443塩基対長のCNEが、組織特異的なエンハンサー活性を有することを示した。neurula期には前脳に、pharyngula期にはanterior neural ridgeにGFP蛍光を認めた。anterior neural ridgeは前脳発生におけるシグナリング・センターと考えられている重要な部位である。CNE3の塩基配列のうち、特定の亜領域を欠く7種類のDNA断片を作成し、それぞれをptkEGFPプラスミドのポリリンカー部位に挿入後、in vivoエレクトロポレーション法により神経胚期のニワトリ胚に導入した。由来の蛍光シグナルの分布を観察したところ、エンハンサー活性の維持に必要と考えられるCNE3内の亜領域(亜領域III,亜領域IV)が特定された。バイオインフォマティクスの手法によりこれらの亜領域内に潜在的に結合しうる転写調節因子を検索したところ、Zic1・zic2・zic3・SOX9等の転写調節因子結合部位が同定された。すなわち、ZICファミリー・SOX9はSALL1の発現調節遺伝子の候補遺伝子である。
すべて 2007 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件)
Pediatric Research 61
ページ: 660-665
Pediatric Research (In press)