研究概要 |
表皮水庖症は生下時から,軽微な外力で容易に水庖を生ずる疾患群である。表皮水庖症の中で,頻度が比較的高く,症状が重篤であるのが,重症の劣性栄養障害型である。本症は基底膜にあるVII型コラーゲンの発現が全くなく,特にQOLが障害され,予後が不良のため,治療法の開発が急務である。本研究の目的は,アミノグリコシド系抗生剤を本症患者の病変部に局所投与することにより,早期終止コドンのリードスルーを誘導し,VII型コラーゲン全長の翻訳が可能になる新規治療法を開発することにあった。日本人劣性栄養障害型表皮水庖症でのホットスポット変異であるE2857Xの変異部を含むDNA断片をPCRで増幅した。次に,その下流にβガラクトシダーゼ(βgal)とgreen fluorescence protein(GFP)遺伝子を組み込み,発現ベクターを作成する。そのキメラ遺伝子を表皮細胞株に導入にして,stableの細胞株を確立した。その培養細胞株に上記した抗生剤の濃度を振って添加すると,βgalやGFPの発現上昇が認められ,リードスルー療法が可能であることが示唆された。患者の表皮細胞に,種々のアミノグリコシド系抗生剤を種々の濃度で添加した。リードスルー現象にて,終止コドンを越え,回復してくるVII型コラーゲンの発現を,遺伝子レベルはRT-PCRとノーザンプロットで,検出した。最後に,患者の細胞を無免疫動物に移植して患者皮膚を構築し,そこに抗生剤を投与すると,基底膜にVII型コラーゲンの発現を見た。 以上より,本治療の有用性が示された。
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