研究概要 |
^<99m>Tcとの錯形成により一価の配位子から二価の^<99m>Tc標識薬剤が作製できれば,同時投与される大過剰の配位子の影響を低減できると考えた。標的分子認識素子としてα_vβ_3インテグリンと高い親和性を有するc(RGDfK)を,二座配位子としてD-penicillamine(D-Pen)を選択し,本薬剤設計の可能性を検証した。非放射性Re-D-Pen錯体のNMR分析とヘキサン酸を介してc(RGDfK)をD-Penに結合したD-Pen-N-Hx-c(RGDfK)のRe錯体1の質量分析から,ReとD-Pen-N-Hx-c(RGDfK)が1:2の結合比の錯体を生成することを認めた。Re錯体1を標品とする分析から^<99m>Tc標識も^<99m>TcとD-Pen-N-Hx-c(RGDfK)が1:2の結合比の錯体であることを認めた。^<99m>Tc標識体は配位子の濃度が1mMまで放射化学的収率97%以上で得られ,過剰の配位子を除去した場合でも安定に存在した。D-Penをエチレンで架橋した4座配位子に2分子のc(RGDfK)を結合したTMEC-[N-Hx-c(RGDfK)]_2についても同様の検討を行い,Reおよび^<99m>Tcと1:1の結合比の錯体3および4を生成することを認めた。阻害実験から算出した錯体1のIC_<50>は10.4nMであり,錯体3(IC_<50>=45.3nM)よりやや低値であり,一価のc(RGDyV)(IC_<50>=390nM)に比べ遥かに低値を示した。また,10^<-7>Mの配位子を加えた場合^<99m>Tc標識体2は未添加時の72%が残存したのに対し,4は42%まで低下し,一価配位子から二価の^<99m>Tc標識体を作製することで混在する未標識配位子の影響を低減できることを認めた。以上の結果から,本薬剤設計は標的分子への集積向上を目的とする^<99m>Tc標識薬剤の新たな設計として有用であることを示す。
|