研究概要 |
膵・膵島移植は1型糖尿病に対する唯一の根治療法であるが,問題点の一つとしてドナー不足が挙げられている.我々はこのドナー不足の解決策として,異種膵島移植の臨床応用に向け研究を進めている.異種膵島移植では,移植された膵島は,特にヒトCD8^+ CTLを介した細胞性免疫により拒絶される.我々は,新規細胞傷害抑制分子であるヒトdecoy Fas及び膜型FasLをブタ血管内皮細胞株(SEC)に過剰発現させることで,レシピエントCTLの異種細胞傷害性を抑制できることを報告してきた.今回,これらのアプローチに加え,ブタcellular FLICE-like inhibitory protein short/long form (c-FLIP_<S/L>)過剰発現による細胞傷害抑制効果を解析した.【方法】ネオマイシン耐性遺伝子を有するpCR3.1ベクターに全長ブタFLIP_<S/L>を組み込んだプラスミドを構築した.リポフェクション法を用いて目的遺伝子をSECに導入,G418にてselectionを施行,single cloneを樹立した.目的分子の発現はRT-PCRおよびWestern blottingにて確認した.健常人末梢血より分離したPBMCを,SECおよびヒトインターロイキン-2で混合培養,計14日間培養し,リンパ球を活性化,この活性化リンパ球より磁気ビーズを用いてCD8^+ CTLのみ分離しeffector cellとして用いた.傷害性は^<51>Cr release assay,アポトーシス細胞はTUNEL染色およびAnnexin染色にて解析した.【結果】RT-PCRおよびWestern blottingにて,高発現株をselectionした.Effector cellのparental SECに対する傷害性は高度であったが,c-FLIP_<S/L> transfectantでは,この傷害性が抑制されていた.また,c-FLIP_Lの方がc-FLIP_Sよりも傷害抑制効果が顕著であった.TUNEL染色およびAnnexin染色では,parental SECよりもtransfectantにおいて,アポトーシス細胞の減少を認めた.【結論】ブタc-FLIP_<S/L>の過剰発現により,ヒトCD8^+ CTL細胞傷害性を抑制できることが示された.これらのアプローチはブタ異種移植における細胞性免疫拒絶反応の制御に寄与できる.
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