研究概要 |
脳腫瘍の中核をなす膠腫(グリオーマ)の発生には、複数のがん抑制遺伝子の変異や欠失が深く関わっていることが判明してきている。本研究では、脳腫瘍の発生に関わる遺伝子群のうちアポトーシス制御分子であるXIAPにターゲットを絞り、新しいゲノム創薬方法論を用いXIAPのCaspase阻害活性を抑制する化合物を私共が開発したin silico分子設計手法用いてデザインする。そして、該化合物を化学合成し、XIAPとの結合キネティクス、細胞レベル及び動物レベルでの生理活性を明らかにすることを目的とする。 XIAP結合モチーフの,A-X-X-X(X :任意の20種アミノ酸)を,in silico分子設計手法を用いてDocking studyによってその結合親和性を評価することによって,予測結合親和性の高いSmac様ペプチドを順位づけしたところ、SmacのN末端部分よりもXIAPに親和性の高いペプチド配列が決定できた。そこでさらに該ペプチドの有効性、及び解析効率を高めるため 1.ペプチド(ペネトラチン)による細胞内導入の検討を行う。 2.ペプチドに蛍光標識する。 3.高分子(シクロデキストリン)で内包する。 4.アポトーシス作動性(Caspase-3切断部位の導入) 以上を行った。 ペプチド(FITG-RQIKIWFQNRRMKWKK-DEVD-AVPFAQ-amide)を作製し、該ペプチドをシクロデキストリンで8時間ミックスし、細胞に添加したところ、エトポシド10μg/mLではアポトーシス抵抗性のSK-MG1細胞において当該ペプチドにアポトーシス亢進性を見い出した。 このことは本ペプチドデザイン法が有効であることを示している。 本研究により、脳腫瘍の分子標的治療法が開発されることにより悪性脳腫瘍の治療の可能性が拓けてくると考えられる。
|