研究概要 |
中枢神経系や脊髄のどこの部位が麻酔薬の作用機序にどのように関わっているのかは,麻酔機序を解き明かす上で非常に興味深い。抗侵害刺激は一次痛覚神経が脊髄後角に入り脊髄を上行し中枢神経へ伝えているが,麻酔薬がどの部位で作用しているのかは明らかでない。 一方,動脈血管造影法が臨床でも広く使用され栄養動脈を選択的に造影できる。この技術を応用すれば,微小カテーテルを挿入し低容量の麻酔薬を投与することで,選択的な脊髄を麻酔することが可能である。今年度はウサギを用いて,鼠径動脈から微小カテーテルを栄養動脈に挿入し,低容量の静脈麻酔薬を持続的に注入し麻酔作用における中枢神経の部位の同定を行っているが,麻酔の方法などに改良の余地があり,本年度内には結論を得られなかった。しかし,中枢神経の部位において,受容体,イオンチャネルなどの麻酔薬ターゲット分子を同定の第一段階として脊髄後根神経節細胞にターゲットをしぼり,そこでのラットにおける神経相同部位をスライスし,パッチクランプ法を用いて,イオンチャネルに対する麻酔薬の影響について解析を開始し,麻酔薬は影響する事実を確認している。特に脊髄および,中脳レベルでのTRP受容体については麻酔薬の関与が強く疑われている。TRP受容体は麻酔機序だけでなく痛覚機序にも強く関与している所見をいくつか確認できている。 さらに今後は,これらのデータをもとに麻酔薬のターゲット受容体のRNAを組織から抽出し,アフリカツメガエル卵母細胞発現系に発現させ反応を解析する予定である。
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