研究概要 |
1)DJ-1によるシグナル伝達機構-AKT経路 DJ-1は増殖を促進するAKT経路の正の調節因子として知られているが、その分子機構は不明であった。我々は、DJ-1が、AKT経路の上流に位置するPI3キナーゼの負の調節因子PTENに直接結合し、PTEN活性を阻害することで、AKT経路を活性化することを見出した。酸化ストレスは与えると一過性にこの経路が活性化する。DJ-1の106番目のシステインは(C106)、このストレスにより-SOH,-SO_2H,-SO_3Hと酸化され、これに伴い、PTENへの結合が最初増強、やがて減少したことにより、C106の酸化程度に依存したDJ-1の増殖機構の一旦が明らかとなった。 2)DJ-1によるシグナル伝達機構-ERK軽路 DJ-1はERK経路に存在するc-Rafとも直接結合することが判明した。血清刺激などにより、この経路が活性化されるが、この場合もC106酸化レベルが重要な役割をしていた。 上記のAKT,ERK経路とも、RASを基点に分岐した経路である。DJ-1はrasと協調的な癌遺伝子として我々により発見されたが、DJ-1は複数のras経路を活性化することで、その機能を果たしていることが明らかとなった。
|