研究概要 |
口腔の感覚機能評価のひとつである口腔立体認知能(Oral Stereognosis Ability:OSA)について,高齢者を対象に疫学調査を行い,咀嚼機能との関係を検討した. 被験者は,研究の参加に同意が得られた高齢者(121名,男性51名,女性70名,平均年齢67.1±4.2歳)である.口腔感覚機能の評価には,口腔立体認知能(OSA)試験を用いた.OSA試験には,6種類(円,楕円,半円,正方形,長方形,正三角形)の形態の試験片を使用した.各試験片は,被験者の視野に入らないように舌背中央に乗せ,図を示した上で直ちに自由に形態を判別させた.試験順序はランダムとし,各形態・寸法の試験片につき,それぞれ2回,合計12回行った.回答は,3段階(正解=2,近い答え=1,不正解=0)で評価し,合計点数をOSAスコア(満点24点)とし,12回の回答に要した時間の総計をOSA時間とした. OSAスコアの平均は18.4(SD:3.8),OSA時間の平均は119(SD:51)秒であった.被験者全体では,OSAスコアならびにOSA時間は性別によって有意な差はみられず,年齢,残存歯数,咬合力,唾液分泌速度ならびに咀嚼能率との間には,有意な相関がみられなかった.しかし,Eichner A群(n=25)では,OSAスコアと咀嚼能率との間には,有意な負の相関(r=-0.465,P=0.019)がみられ,逆にEichner C群(n=15)では,OSAスコアが高いほど,咀嚼能率が高くなる傾向がみられた(r=0.403,P=0.136). 今後,被験者数を増やし,更に詳細に検討を加える必要がある.
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