研究概要 |
本年度は,代表研究者らが開発した天然多糖誘導体であるリン酸プルランについて,抗菌物質を徐放する硬組織用ドラッグデリバリーシステムとしての有用性を中心に評価した。 (1)抗菌物質の最小有効濃度の検討 う蝕原因菌Streptococcus mutansを用い抗菌効果を検討した結果,抗菌物質である塩化セチルピリジニウム(CPC)単独では、軽い洗浄後でも抗菌効果は発揮できなかったが、リン酸化プルランとCPCの混合溶液では両者の濃度がわずか0.01%であるにも関わらず著しく増殖が抑制されていた。この結果は歯周病原因菌であるAggregatibacter actinomycetemcomitansでも同様であった。しかしながら,リン酸化プルランとCPCの配合比の異なる溶液を作製して同様の実験を行ったところ,リン酸化プルラン0.05%,CPC0.01%(リン酸化プルラン:CPC=5:1)やリン酸化プルラン0.01%,CPC0.05%(リン酸化プルラン;CPC=1:5)の溶液では、リン酸化プルランやCPCの濃度が高くなったにも関わらずほとんど抗菌作用を示さなかった。 (2)細胞実験および動物実験による安全性の検討 線維芽細胞,骨芽細胞,間葉系幹細胞のいずれもリン酸化プルランにより細胞増殖が促進されることが明らかとなった。これより細胞毒性を有する可能性は極めて低いと考えられる。また、ラットに0.01%リン酸化プルランと0.01%CPCとの混合液を1週間水の変わりに与えた結果,コントロールである蒸留水を与えた群と比較して,肝組織に大きな違いは認められず、本剤の高い生体安全性が示唆された。
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