研究概要 |
1.19年度の研究成果:ヒト骨髄由来幹細胞(HBMSC)の未分化性を長期に維持する無血清培養条件を確立した。 方法:骨折あるいは顎変形症手術時に患者よりインフォームドコンセントを行い、承諾書を得た後、顎骨より骨髄細胞を採取した。我々がすでに報告した、マウス胚性幹(ES)細胞の未分化性と多分化能を維持可能な無血清培地ESF7培地を基礎培地として、種々の因子の添加し、HBMSCの未分化状態を維持する培養条件を検討した。 結果:ESF7培地にFGF-2を加えることによりHBMSCの長期無血清培養が可能であることが明らかとなった。また、同培地を用いることにより10代以上に渡って継代培養が可能であった。 未分化マーカーであるSH-1,-2,CD13,34,49,117,140の発現を、これらの抗体を用いて免疫組織学的解析法ならびにFlow cytometory(現有備品)により検討した結果、これらマーカータンパクを発現していた。また、nanog,やアルカリフォスファターゼ活性も長期にわたり陽性を示した。 2.ヒト骨髄幹細胞から位置情報をもつ骨の誘導条件を確立した。 上記で決定した無血清培養条件下に,未分化な骨髄幹細胞に、nodal,BMP2,4,7,FGF-1,2,7,10を添加し、スミロン・スフェロイドプレートに播種してスフェロイドを形成させ、10日間培養を行い、4%パラフォルムアルデヒドで固定、あるいは、RNAを抽出し、組織学的検討及びDNAマイクロアレイ解析を行った結果、nodal、およびBMP4により顎顔面の位置情報を示す遺伝子発現を認めた。 未分化な骨髄幹細胞をnodal、あるいはBMP4,で処理した細胞群を混合し、スミロン・スフェロイドプレートに播種してスフェロイドを形成させ、10日間培養を行い、組織学的検討およびRNAを抽出した。4%パラフォルムアルデヒドで固定したスフェロイドのパラフィン切片を作製し、組織学染色(HE染色、アルシアンブルー・PAS二重染色、アニザリンレッド染色)を行い、誘導される組織を解析した。 遺伝子発現の解析結果:骨・軟骨のマーカー遺伝子であるRunx2,Sox5,6,9,オステオネクチン,オステオポンチン。頭部マーカー遺伝子であるOTX-2,Msx1,Msx2,goosecoide,顎顔面領域特異的遺伝子であるHoxa2,Distal-less 1-4,Neural crestマーカー遺伝子であるAP2,Snail,Twist、歯のマーカー遺伝子であるアメロジェニン遺伝子の発現を認めた。
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