研究概要 |
本研究は,新規に開発された血管誘導性ペプチド(SVVYGLR)をナノゲルエンジニアリングを用いてナノ微粒子化することでDDS(Drug Delivery System)機能を付与し,それを唾液腺に局所投与する標的療法により口腔乾燥症(ドライマウス)治療として唾液分泌機能を再生させることを目的としている. 本年度は,本ペプチドの有効性評価の指標となる顎下腺における炎症性サイトカインの変動に対する検討と結紮によるアポトーシス関連遺伝子発現の検討、唾液分泌傷害モデル動物の顎下腺体への局所注射による標的療法(クリップ解除直後に注射し、2週後に摘出)を行った. その結果,IL-1β、IL-6は1週間のクリップ結紮により上昇し、解除後2週でも上昇が認められた。INF-γ、IL-10はクリップ結紮により減少し、解除後1週からやや上昇を認めた。また、結紮によりApi5,Bagl,Bclaf1,Birc5,Bnip3など12のアポトーシス関連遺伝子の発現が認められた。標的治療の結果、ペプチド投与群は対照群に比べ、2週後で腺体重量および萎縮傾向からの回復が認められた。それに伴い、組織像の変化として本ペプチドの有する血管新生作用として、顎下腺体内に毛細血管の増生が認められ、炎症変化の消失や変性からの回復が認められた。このことから、本ペプチドの局所注射は唾液腺組織の再生を促進させた。しかしながら、実際の唾液腺分泌機能の再生は現時点で明らかになっていないが、その可能性は高いものと考えられる。また、ナノゲルによるDDS効果については高用量では認められなかったが、現在低用量での検討行っている。 今後、ナノゲルの効果とともに唾液腺分泌機能再生の検討を行い、本治療法の有用性を検証していきたい。
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