研究概要 |
本年度も,引き続き「腰痛症状および脊柱彎曲の変化の測定」を行った。被験者(妊婦)数は,30名のデータを取得することができた。しかし,入院や帰郷,転勤など様々な理由によって,産後一ケ月までのデータが揃った被験者数は8名となった。本調査は,約8ケ月に及ぶものであり,さらに対象者が妊婦のため不安定な状態でもある。加えて,その内容を出産歴や腰痛の有無,整形外科既住などの条件で分類すると,統計学的に検討するには困難な状況であった。本研究のように,妊娠初期から産後一ケ月まで継続してデータを取る試みは殆ど無く興味深いものであるが,対象者の母数を予想以上に多く設定する必要があると考えられた。また,本年度は力学試験や数値シミュレーションを行うため,臨床調査と並行して取得した臨床データを用いて,それらに必要な試験条件や数理モデルの構築について検討を行う予定であった。しかし,上述したような結果より十分な臨床データの取得には至らなかった。 脊柱の彎曲の変化ついて,我々の過去の研究成果では,腰部の脊柱彎曲の深さと腰痛には関係があることが示唆された。しかし,今回の結果では同様の傾向は見られなかった。妊婦の腰痛は,生活習慣や体質の変化など多くの要因が考えられ,それらが複雑に絡み合って生じる。よって,対象者数の少ない現状では今回のような傾向の掴めない結果になったと考えられる。なお,現時点でこの結果から判断できるものサではないが,アンケート調査からは,生活習慣(仕事や運動)も大きな要因であるとも考えられた。本研究では,腰部の彎曲や膝や足首の角度の変化など,細かいパートに注目して研究を進めたが,生活習慣を考慮するなら,歩行や持ち上げ動作などの運動に注目し,より系統的に調査を進めることが腰痛原因の解明に必要だと考えられた。 今後は,得られた結果を基に,動作解析や妊婦スーツなどを用いた力学的な実験研究を検討している。
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