研究概要 |
H20年度は, 引き続き, 自作「うつ病で治療されておられる中高年女性の方・ご家族の皆様へ」のパンフレットを活用し, 退院間じかな患者に対する60分程度の「個別心理教育」を行った。パンフレットを活用した個別心理教育の概要は, (1)理論的根拠 ; ストレス脆弱性モデルと感情表出モデル、(2)目的 ; 症状や経過の中で悪循環に陥っている本来自己が回復し、対象者のQOL向上を目指す、(3)介入方法 ; 対象者の心情や疑問などについて、安心して語れることを重視した個別面談。(4)パンフレットの内容 ; [〇!ア]うつ病の知識や情報の提供, [〇!イ]薬物の作用や副作用の情報の提供, [〇!ウ]退院後の生活の仕方の検討, [〇!ウ]視点の転換, [〇!オ]自分を大切にして楽しい時を過ごす, [〇!カ]リラクゼーションの実施, [〇!キ]心の健康自己チェック。H20年夏まで, 計5人の患者に個別心理教育を行い, その有効性について, (1)WHO-QOL26を心理教育前後に調査, (2)患者にとっての心理教育の意味について心理教育最終日に半構成的インタビューを行い, 分析した。その結果, (1)退院後のQOLでは, 有意差がなかったが, 個別心理教育後に特に高い傾向が見られた項目は<余暇を楽しむ><家の周囲への外出><毎日の活動への遂行能力満足感><友人の支えへの満足感><家と周囲環境への満足感>の5項目, 特に低い傾向が見られた項目は<体の痛みや不快感による活動制限><治療の必要度><生活の意味感><社会資源の利用満足感><交通機関への満足感>の5項目であった。(2)パンフレットを活用した個別心理教育は, 患者が【社会に踏み出す自信を取り戻す】ために, 《きっかけをつかむ》《手掛かりをつかむ》《新たな力をつかむ》ことを意味していた。本研究から, パンフレットを活用した個別心理教育は, 患者が自信を取り戻し, 社会生活を維持することにつながり, 退院支援のみならず, 外来看護や地域看護に活用でき, 退院後の家族全体のQOL向上に向け, 看護の質向上に貢献できることが示唆された。
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