研究課題
若手研究(A)
本研究では、先ず、シリコンベースの半導体により、ナノサイズのポアを製作する。そして、それを用いてDNAがその中を通過するところを一分子単位で観測する。これを目標として研究をすすめ、結果としてDNAを(1)イオン電流の変化と、(2)蛍光分子により染色されたDNAを蛍光顕微鏡、によって一分子単位での観測をすることに成功した。イオン電流を用いてのDNA一分子観測は、近年、世界でハーバード大学をはじめとする有名な研究機関で盛んに行われている。しかしながら、実際の実験において、λDNAなどの比較的長いDNAを用いると、一分子の信号を統計的に解析できるくらい多くのデータを得る前に、DNAのシグナルが途絶えてしまう。この原因について、イオン電流の変化からDNAがポアに進入しても、そのポアから出てきていないことが予測でき、DNAがポアを通過する前に、すでにポアを構成するSiN表面に付着しており、一端のDNAがポア付近に存在する電場により引き込まれたのではないか、そして、そのDNAの存在により、後から通過しようとするDNAが通過できなくなるのではないかという予測がたてられていた。そこで、私は蛍光分子を用いDNAを染色して、DNAがポアを通る瞬間を画像としてリアルタイムに捉えた。私の観測結果からは、確かにDNAがポアにひっかかって、通過せずに揺らいでいる像を得ることがてきたが、決してDNAはSiN表面に付着しているのではなく、DNAはポアの中にだけ存在していた。この現象をナイーブに説明すると、DNAがポア付近の電場により急激にポアに引き込まれるため時には"knot"を形成してしまい、それがポアの中に入りこむ。このknotは通過するには大きすぎるために、ポア内でつまってしまう。私はまた、この現象が起こった際に、上記の推測からAC+DCの電圧を印加するとそのつまったDNAをポアから取り出すことに成功した。この結果は、今年のアメリカ物理学会で口頭発表し、同様の研究を行っているグループの興味をひいた。今後は、DNAがknotをつくらないようにポアに進入する工夫が必要となってくることが予測でき、現在その研究を進めている。
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バイオマテリアル-生体材料 25-5
ページ: 287-288
10019953022
Proceedings nanotechnology Japan Nano 2007 5
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