研究課題
若手研究(A)
本研究は、江戸期の城下町松江にかかわる絵図を用いて、デジタルコンテンツ化を通して、城下町松江の景観を復原し、絵図に記載される住人の社会的属性についての分析および、城下町松江の形成と変容に関する動態的な分析から、前近代におけるわが国の地理的特性を明らかにするものである。その結果、(1)表通り、裏通りには借家が多く形成され、景観の一特徴となっていたこと、松江では江戸中期の1670年代の絵図にはすでにみられたこと、(2)町絵図は原図と貼紙の2層にわたって形成され、原図は安永9年(1780)前後、貼紙は天保12年(1841)年代の景観であることが分かり、2年代にわたって景観を復原することができた。その結果、ほとんどの町において、大きな居住者の変動がみられることが分かった。変動がみられなかったのは、松江藩で産物とされた生蝋やたたら製鉄にかかわる商人層のみであった。(3)絵図に記載される居住者の社会的属性を検討したところ、原図、貼紙とも、女性がみられることが注目される。なかには、屋敷の所有者にも女性がみられ、後家ではなく、夫婦で屋敷を所有している例もみられた。さらに娘や孫娘までが屋敷所有している事例もみられた。これは家族経営のなかで、女性が屋敷所有の権利を有していたことを指すものとみられ、江戸時代の城下町において、商家経営だけでなく、屋敷経営が重要な経営であり、その担い手に女性がみられたことは注目される。
すべて 2009 2006
すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (1件) 図書 (4件)
人文地理 58-4
ページ: 88-89