研究概要 |
本研究では,伊藤確率微分方程式によって記述される大規模システムモデルに対して,確率Nashゲームを扱った.主な貢献は,従来,不確定要素を考慮することが出来なかったNashゲーム問題に対して,不確定要素をWiener過程で表現し,状態に依存するノイズとして伊藤確率微分方程式で表現することによって,確率Nashゲーム問題を新規に考慮した点である.次に,確率Nash均衡状態を定義し,戦略組を構築した.以上により,不確定要素を考慮したNash均衡制御を実現することが可能となった.具体的には,従来から報告されているLQ確率制御問題の結果を利用して,確率Nash均衡を実現する戦略組及び関連する連立型確率Riccati方程式を導出した.続いて,連立型確率Riccati方程式の解の漸近構造を陰関数定理によって明らかにした.この得られた漸近構造を利用して,近似確率Nash均衡戦略を提案した.さらに,導出された近似確率Nash均衡戦略による評価関数の劣化の程度を明らかした.その結果,構築された戦略組の使用が妥当であることが評価された.最終的に,提案された近似確率Nash均衡戦略の有効性を検証するために,実用的な大規模システムに対して,シミュレーションを行い,有用性の検証を行った.以上より,動的ナヅシュゲーム問題に,シろテムに悪影響を及ぼしている「1.外界からの振動等を表す確率外乱」および「2.モデル化誤差を表す確定外乱」を考慮することができたところに大きな貢献が見られる.さらに,実機に適用することができる戦略クラスまで,結果を拡張することができた点で非常に有用な結果であると考えられる.
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