研究概要 |
平成19年度の研究計画は,前年度に考案した動的にチューニングを行うマスタ・ワーカ方式のような,複雑な並列プログラムを容易に記述できるプログラム記述方式を考案することであった.この計画を実現するために,本年度の研究ではオブジェクト指向モデルを用いた並列プログラム言語を提案した. 具体的には,(1)メッセージ通信を意識しない並列アルゴリズムの記述,および(2)ハードウェア依存の処理と並列アルゴリズムの記述の分離,の2点が可能な並列プログラム言語の提案と,実機上で実行可能なメッセージ通信型の並列プログラムへの変換手順について検討した. (1)については,オブジェクト指向の考え方に着目し,並列アルゴリズムを構成する役割(例えばマスタやワーカなど)単位でクラスを定義し,各インスタンスを並列計算環境の計算ノードに配置する手法を検討した.また,(2)を実現するために,オブジェクト指向プログラミングにおける多態性に着目した.ハードウェア依存の処理は,前述の役割を表すクラスを継承したサブクラスにおいて記述する.そして,並列アルゴリズム自体はスーパークラスのみを用いて記述する.これにより,並列プログラムの記述時には,ハードウェア依存の処理と並列アルゴリズムの記述を分離でき,実行時には,多態性により,インスタンスが割り当てられた計算ノードに適合したハードウェア依存の処理が実行される. 提案方式は,並列プログラムの開発者が並列アルゴリズムの考案と記述に注力することを可能とし,並列プログラムの開発効率を向上させる観点から有用といえる.本研究で得られた成果は,電子情報通信学会総合大会にて発表した.
|