本年度は昨年に引き続き調査を行うとともに、調査結果にもとづいたコンテンツ制作を行った。 ●調査結果 調査対象は前年と同様アヌシーアニメーション国際映画祭とし、前年の調査で不足していたマーケットやリクルートといったビジネス面にも比重をおいての調査とした。調査内容はアニメーション表現、手法の動向、各国の取り組み、3DCGの活用状況と今後の可能性を主としており、本研究院が刊行する紀要vol.8に報告資料として採択、掲載されている。結果として、世界のアニメーション業界における3DCGの需要は企業ベースのみならず、学生を含む個人単位でも確実に増加していることが判明した。一方で、日本における3DCGの受入状況は現場の作業環境から消費者の支持獲得に至るまで、浸透しているとは言えず、3DCGとどのように向き合っていくかが課題となっている。以上の点から、今回の3DCGによる新しい表現への取り組みの有用性を確信することができた。 ●制作 日本の伝統的な光源を用いたフル3DCG映像作品を制作するにあたり、ベースとなる舞台を佐賀市三瀬村やまびこ交流館とした。本建造物は江戸時代より続く寄棟づくりによる農家を保存したものであり、障子や畳、漆喰の壁などによる日本の伝統的な光環境を有している。建造物内で撮影によりHDRパノラマ画像を採取し、イメージベースドライティングの技術を用いて3DCG内の光源へと変換、日本的なライティングを施したイメージを作成した。また、作品の題材を架空の妖怪による寸劇とし、ストーリー構成おこなった。日本らしさを有した作品に仕上がったと確信している。今後、同じ手法をベースにより多くの作品を制作し、本課題の有用性をさらに確固たるものへとしていきたい。
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