研究概要 |
紙ラベルを手で配置しながら思考をまとめる作業はKJ法をはじめとして一般的に行われている.しかし,これらの作業における個別の紙ラベルの移動過程を詳細に分析するためには,ビデオ記録をもとに電子化を行う必要があった.我々はふりかえりや分析のための作業記録の電子化を簡易化するため,記録ユーザの状況やスクリーン付近の実オブジェクトを光学的に認識し,表示情報に反映可能な透過調光フィルムを用いたテーブルトップインタフェースを構築し,その可能性について検証した.透過調光フィルムとは,通常はすりガラスのように不透明の状態であるが,電圧を印加すると内部の液晶分子の配列が変わり,透過度を高めることができるフィルムシートである.この透過調光フィルムをリアプロジェクション型表示装置のスクリーンとして用いると,通常時は背面からプロジェクタで映像を投影する透過型スクリーンとして利用し,前面の状況を取得する時のみ電圧を印加し透過度を高めることで,スクリーン前面の様子を背面のカメラから詳細に取得するという,2種類の相反する機能を兼ね備えた表示装置を実現することができる.スクリーンの透明化とカメラ台数を増やすことにより,3cm四方の大きさのビジュアルタグ(紙に印刷した2次元バーコード)を認識可能な解像度を確保できることを確認した.これにより,60インチ大の天板ディスプレイ上にて,100枚以上の紙ラベルを多人数で同時に扱うことのできる環境を,簡易かつ拡張性の高い提案機構にて構築できることを明らかにした.
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