研究概要 |
手首の書字運動中の筋電信号から抽出した筋骨格系の運動プリミティブを検証するためには,手首の順ダイナミクスモデルが必要になる。今年度には手首運動に関わる4個の筋肉(短橈側手根伸筋+長僥側手根伸筋(ECR),尺側手根伸筋(ECU),尺側手根屈筋(FCU),僥側手根屈筋(FCR))から手首運動を再現できる順ダイナミクスモデルを作ってその性能をトルクレベルで確認した。(Lee, et. al.RinshoByori,2007)そして,手首の順ダイナミクスモデルが分析できる手首運動・筋電図解析システムを用いて,運動プリミティブに対するフィードバックの与え方等の運動実行条件の影響を検討するため,複数の運動課題を考案し,申請時から考えていた手首関節による視覚フィードバックありの書字運動に加えて,視覚フィードバックなしの書字運動や動く指標の追跡運動,手首の8方向への直線運動など様々な手首運動を追加した。実際の実験では,正常被験者に加えて東京都立神経病院の入院患者の協力を得て,神経疾患による運動プリミティブの変性についても検討した。これまでに正常被験者18名,小脳疾患19名,パーキンソン病25名,動作性ミオクローヌスなど他の疾患8名からデータを取得し,神経疾患による筋骨格系の運動プリミティブの特徴抽出を試みている。特に神経疾患による筋骨格系の運動プリミティブの特徴が病態の解明や評価に役に立つことが認められ,国内および国際特許を出願した。(国内特許:特願2007-226596,国際特許:PCT/JP2008/053735)今後は疾患一正常運動プリミティブとの比較からプリミティブ生成に関わる中枢神経機構の解明を試みる。
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