研究課題
若手研究(B)
衝動性に関する研究課題は、近年の高次脳機能計測技術の進展により、エージェントである内部モデルと脳という実体との比較・検討が可能となり、国際的に大きな関心の寄せられているテーマである。本研究課題では衝動的反応の制御プロセスを支えるメカニズムについて、報酬・罰Go/Nogo課題(reward-punishment Go/Nogo task)をモデル実験系として、課題遂行中にfMRIおよびNIRS計測された脳活動および行動指標の両者より統合的に検討することを目的とした。報酬・罰Go/Nogo課題における誤反応は、反応してはならない数字に反応するCER(Comission error)、反応すべき数字に対して反応をしないOER(Omission error)の二つのタイプに大別されるが、前者のCERは「反応を抑制するコストよりも、反応出力が優先された結果」として衝動性の指標とされる。以下に得られた主要な成果を示す。まず、CERは、反応の成否に応じて罰が下される条件よりも、報酬が与えられる条件においてこれが顕著となることが明らかとなった。すなわち、潜在的に報酬が獲得可能な文脈において衝動的反応が亢進することが確認された。その一方で、社会的なストレッサー(課題遂行中の他者の視点)がこれに加わることにより衝動的反応は低減することがわかった。さらに、後者の条件においては、前頭前野腹外側部(VLPFC:Ventro Lateral Prefrontal Cortex)の活動が増大することから、VLPFCの機能亢進により衝動的反応が適切に制御されうることが明らかとなった。以上の結果は、「キレル」といわれるような衝動的行動・薬物依存などの問題における脳内機構の解明、およびそれらに共通する衝動的脆弱性の対処方略の提案へと向けた基礎的知見になるものと期待される。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
心理学ワールド
ページ: 21-24
Neuroimage 39
ページ: 500-514
Annals of the New York Academy of Sciences 1086
ページ: 134-143
Psychopharmacology 187
ページ: 30-35
Journal of Pharmacological Science 100
ページ: 427-432
Neuroimage 29
ページ: 721-733