研究概要 |
今年度は,遺伝子多型の相関解析における問題点である構造化についての研究を行った.構造化問題とは,複数の人種の混合集団を用いた相関解析において偽陽性が増加する現象を指す.原因は人種間でのアレル頻度や罹病率の異なりである.特に罹病率の異なりは,人種間の遺伝的効果の異質性と関係していると思われる.本年度は人種間の遺伝的効果の異質性についての研究を行った.ゲノムワイド相関解析で発見された疾患感受性遺伝子に対し,最初の報告と別の研究機関で追試を行った結果を収集し,人種間の異質性が存在するかを検討した.研究の対象として,変形性関節症とアスポリン(ASPN)の関連を取り扱った.日本人集団において,ASPNのリピート多型が,変形性関節症のリスク多型となることが,ゲノムワイド相関解析により発見された.これに対し,欧米や中国で追試が行われ,それぞれ異なる結果がみられた.本研究では,それらの結果をメタアナリシスで検討し,ASPN多型の膝変形性関節症に対する効果には,欧米とアジアで異質性が存在することを確認した.ASPN多型は,アジア人においては膝変形関節症に対し大きなリスクをもつが,欧米では大きなリスクとならないことが示された.その結果は,論文として報告されている.また,研究間の異質性を示す尺度を構成する方法を引き続き検討している.EMアルゴリズムによる異質性の尺度構成法について,性質を検討し,シミュレーションにより手法の評価を行った.また同手法をASPNのデータに適用している.現在,同手法については,論文を作成中である.
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