量子化学計算で最もよく使われる密度汎関数法を、SIMD型計算機で実行する事で、飛躍的な高速化を目指した研究である。最近のグラフィックボードは単精度で高速なSIMD型プロセッサで作られており、多数出荷されるため価格性能比が高い。そこでグラフィックボードで密度汎関数計算をするアルゴリズムを開発した。単精度演算でも必要精度が得られるよう、昨年開発したCoulomb項と交換相関項の計算アルゴリズムを改良した。NVIDIA社のGeForce8800 GTXにCUDAを用いて実装し、インターフェースC関数を書き、Gaussian03と結合した。代表分子としてTaxolやValinomycinを選び、計算精度と実行時間を調べた。単精度演算でも、倍精度と実用上差が無いエネルギーが得られた。またCoulomb項はPentium42.8GHzの約10倍、交換相関項は約80倍の速度を得た。全体では最新のQuad core CPUの約7倍の速度であり、安価なグラフィックボードで密度汎関数計算を、大幅に加速できる事が分かった。
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