研究課題
若手研究(B)
「脳組織における小胞体ストレス応答の細胞種特異性」の全貌解明を目標に、脳組織に発現している新規の膜貫通型転写因子BBF2H7(BBF2 human homolog on chromosome 7)の機能解析を行った。以下の内容を、研究成果として雑誌論文に発表した。我々は、新規の小胞体ストレストランスデューサーBBF2H7を同定した。BBF2H7は、構造的にOASISと相同性が高いCREB/ATFファミリーに属する転写因子の1つで、bZIP(basic leucine zipper)ドメインおよび膜貫通ドメインを保持し、小胞体膜を貫通している。BBF2H7は、小胞体ストレスに反応して膜内切断を受ける。切断されたbZIPドメインを有する細胞質側のN末断片は、核内に移行し、サイクリックAMP応答配列(CRE)に作用することで、標的遺伝子の転写を活性化する能力をもつ。興味深いことに、BBF2H7蛋白質は、通常の状態では発現がみられないが、小胞体ストレス時においてのみ翻訳レベルでの急激な発現上昇がみられる。この結果は、BBF2H7がUPRシグナリングにおける後期においてのみ機能する可能性を示唆する。また、in vivoにおいて、BBF2H7タンパク質は、中大脳動脈永久閉塞モデルマウスの脳梗塞ペヌンブラ領域において神経細胞に強く発現しており、神経細胞において脳虚血時に生じる異常タンパク質蓄積の回避に重要な役割を担っていることが示唆された。アストロサイトで機能するOASIS、神経細胞で機能するBBF2H7の発見を通じて、世界に先駆けて「脳組織における小胞体ストレス応答の細胞種特異性」という概念を提示した。
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Molecular and Cellular Biology 27(5)
ページ: 1716-1729
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsn/ASSOCIATION/shoreisho/2007kondo.htm