研究概要 |
KCNQ1は心臓に発現する主要なカリウムチャネルのひとつで,遺伝子変異に伴うKCNQ1チャネルの機能異常は致死性不整脈を誘引するQT延長症候群の原因となる.心筋KCNQ1チャネルはそのアクセサリサブユニットであるKCNE1と会合し,活動電位の再分極過程を担う緩徐活性型遅延整流性カリウム電流(I_<Ks>)を構成することが知られている.一方,心臓にはKCNE1と構造的に類似した他のKCNEタンパク質(KCNE2からKCNE5)の発現しており,異種性の共発現実験ではこれらもKCNQ1チャネルと機能的に会合することが知られている.本研究では,心筋KCNQ1チャネルの機能調節における各種KCNEタンパク質(特にKCNE3に着目)の機能的意義についてパッチクランプ法を用いて検討した.KCNQ1を恒常発現させたCHO細胞にKCNE1を一過性に発現させると心筋I_<Ks>に類似した電流が得られたが,KCNE3を導入すると常時活性化型のカリウム電流が誘発した.そこでKCNE1とKCNE3を共発現するとKCNQ1/KCNE1電流とKCNQ1/KCNE3電流の両方が誘発した.このことからKCNE3はKCNE1存在下でもKCNQ1と会合できることが示唆された.次にモルモット心室筋細胞にRNA干渉法を適用し,KCNE1ならびにKCNE3の発現抑制が電気活動におよぼす効果を検討した.モルモットの各KCNE遺伝子をクローニング・配列決定を行い,siRNAを作製した.KCNE1を標的としたsiRNAを導入するとI_<Ks>が約70%抑制され,活動電位が延長した.一方,KCNE3のノックダウンはI_<Ks>に影響せず,脱分極直後に速やかに活性化される小さな外向きを抑制し,やはり活動電位の延長を引き起こした.これらの結果からモルモット心筋再分極過程にKCNE1のみならずKCNE3も寄与する可能性が示唆された.
|