研究概要 |
昨年度、雌の卵子を用いたスクリーニングから、Pegl,Peg3,Rasgrf1の各DMRにおいてそれぞれ異常値を示すG3個体が1個体づつ検出された。そして遺伝性を確認すべく、同リターの複数のG3雄マウスを用いて、他系統(DBA/2J)雌との戻し交配個体の産生を行い、得られるG5個体について異常値の検出されたインプリント遺伝子DMRのメチル化レベルの測定を行った。しかし、異常表現型は全てのラインについて再現することができず、遺伝性は確認できなかった。 一方、雄の精子を用いたスクリーニングからは、13個体においてメチル化の異常が検出された。そのうちの7個体は、H19,rasgrf1遺伝子のDMRでメチル化異常が検出されたひとつの家系に由来する個体たちであった。そこで、このラインについて、G1と他系統(DBA/2J)雌との戻し交配個体の生産を行い、得られたG3個体についてメチル化レベルの測定を行った。その結果、複数個体でH19,rasgrf1遺伝子のDMRでメチル化異常が検出され、遺伝性が確認された。また、既知のゲノムインプリンティング遺伝子のノックアウトマウスで観察される精子形成異常も、本ラインの多くのメチル化異常個体で観察された。現在この原因遺伝子の同定に向けて、染色体マッピングを進めている。将来、この原因遺伝子が判明することにより、少なくとも雄での精子形成過程におけるメチル化獲得のメカニズムの解明に大きく貢献することができると期待される。
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