研究概要 |
平成19年度は,前年度の成果を受け,デバイス本体の製作プロセス開発および試作機の製作を行った.シリコーンゴム製のマイクロチャンバーに引張りひずみを付与するための微小リンク機構の製作ではレフォトレジストSU-8の多重露光と表面層露光プロセスを応用することで,可動部を有する微小構造体を実現した.デバイス構造体の製作が可能となったことから,顕微鏡に取り付けた手動マイクロマニピュレータによって,試作したデバイスの作動試験を行った.その結果,マイクロチャンバーに単軸の引張り変形が付与可能であること.さらに引張り変形時にチャンバーの剛体変位が良好に抑制され,当初の目的であった引張り時における高時間・空間分解能観察が実現できる可能性が示された.これらの結果は現在,論文としてまとめられ日本機械学会論文集へと投稿・査読中である.また,論文投稿に先立ち,デバイス構造を特許として申請中である. マイクロデバイスの駆動に用いるマイクロアクチュエータの開発では,前年度の試作機から弾性電極の材質をカーボンブラック添加シリコーンへと変更し,さらなる性能向上を目指した.シリコーンゴム中へカーボンブラックを分散させ導電性を得るための条件検討を行い,良好な導電性を有した伸縮性導体の製作プロセスを開発した.この結果を受け,マイクロアクチュエータを試作し,動作試験を行ったところ,前年度のアルミニウム電極を用いたアクチュエータよりも低電圧で大きな出力変位を実現したアクチュエータが製作できた.しかしながら,伸縮性導体と伸縮性絶縁層を組み合わせた場合に,絶縁層の電流リークが顕著となり,複数回の作動でアクチュエータが破損に至る問題が生じた.この問題については研究期間内に解決に至らず今後の検討課題となった.
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