本研究は、従来のオプティカル・コヒーレンス・トモグラフィ(OCT)装置に比べて数100倍度高度で、侵達度がより深いOCT装置を開発し、この高性能OCTに偏光計測の機能を付加することで、これまで可視化困難であった繊維状組織を鮮明に捉えることを目的としている。本年度は以下に述べるような成果を得た。 実際にin vivo で生体内の偏光特性を高精度に測定するためには、物体の動きによる影響を最小限に抑える必要がある。そのため、画像収得速度を向上させる研究を偏光計測と並行して行った。その結果、従来のデータ取得方法だと毎秒1.7フレーム(奥行き512×横方向1550)であったフレームレイトを約25倍高速(毎秒42フレーム)に撮像できる方法を開発した。この高速撮像法により、生体内の偏光特性が安定に収得できるようになった。 前房隅角の近傍に位置する線維柱帯はいまだ鮮明に捉えられていない。また、虹彩の下部に位置する毛様体は撮像すること自体が出来ていない。これらの生体の撮像には1300nm付近の波長帯がOCT光源として用いられており、水の吸収の効巣から、この波長帯の選択は妥当であると推察される。しかし、散乱の影響を加味すれば、1550nmなどの長波長帯を使用することで高侵達の撮像が可能となることも期待され、侵達度がより深いOCT装置を開発するという目的にも合致する。そこで、1300nmと1550nmの両波長帯で各種生体の侵達度を比較検した。その結果、指などの水分を多く含む軟組織では1300nmの波長帯による侵達の方が若干優れているが、歯などの硬組織では1300nmと1550nmの両波長帯においてほとんど差異は認められなかった。現在、より複雑な組織構造からなる人前眼部の計測を行うため、専用のプローブを開発中である。
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