研究概要 |
本年度は,生体内部の音波伝搬と温度上昇に関する検討をより詳細に行った.複雑な形状の生体と骨内部を伝搬する音波を計算機で解析する手法としてFDTD法を用いた.そして,骨内を伝搬する音波をより正確に求めるために横波成分を同時に解析する弾性FDTD法のプログラムを開発して,骨の有無によって超音波の強度分布がどのように変化するか求めた.その結果,強度として数dB程度の差が出ることが分かった.さらに,生体組織と骨内の発熱状態を綿密に調べるために通常の超音波診断装置と瞬間的な強度は同じだが,エネルギーとしては数百倍の照射となる連続波を送信した条件で解析を行った.その結果,横波を考慮すると生体組織と接する面での発熱が大きくなる結果が得られ,安全性の面から注視すべき結果が示唆された. 次に製作したシミュレーションソフトウエアの信頼性と精度を確認するために生体組織に似せた音響的・熱的特性を持つ生体模擬ファントムを作成して模擬実験を行った.生体軟部組織のファントムは IEC60601-2-37のAnnexに示されている組成で作成し,骨はアクリルを擬似骨として用いた.中心周波数2MHzの超音波をファントムに連続30分間照射し,生体模擬ファントム内部の温度変化を熱電対で測定した.その結果,実測したデータとシミュレートした結果が良い一致が見られ,製作したソフトウエアの信頼性を確認することができた.
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