研究概要 |
平成18年度では,軟骨組織の電気インピーダンスを測定するために,二電極法による電気インピーダンス測定装置を設計・作製した.測定に使用する電極の材料の検討を行い,イオンの溶出が少ない白金電極を測定に用いた.また,軟骨組織の厚さは個体によって異なっているうえ,押し付け力により容易に変形するため,電極間距離を高精度に調整できる試験機を作製した.製作した試験片を用いての軟骨組織の測定には,軟骨の疾患モデルとして酵素モデルを用いた.酵素モデルは,特定の細胞外基質成分を酵素処理により分解するものであり,任意に軟骨組織の内部組織を変化させることができる.酵素処理を施した軟骨組織の電気インピーダンス測定,力学試験,および流動電位の測定を行い,特に軟骨組織内部の水分状態に着目し関節軟骨の電気インピーダンスと力学特性との関係を調べた.軟骨組織のインピーダンスは基質分解に伴い低下し,また分解する基質成分により異なる低下傾向を示した.また酵素処理により軟骨の剛性が低下しており,電気インピーダンスの低下は剛性低下と相関を示した.力学試験,流動電位の測定においても,分解する基質成分により結果に違いが見られた.その結果,電気インピーダンスが含水率や内部水の流動性といった関節軟骨内部の水分状態による力学特性の変化を反映することが示唆された. 得られた結果をもとに,第17回バイオフロンティア講演会(平成18年11月),第28回日本バイオマテリアル学会大会(平成18年11月)および第19回バイオエンジニアリング講演会(平成19年1月)において研究発表を行った,現在,日本臨床バイオメカニクス学会に論文を投稿中である.また,平成19年4月に第46回日本生体医工学会大会で研究発表を行う予定である.
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