研究概要 |
模倣には,向かい合った相手の動きを,鏡のように模倣する場合(鏡模倣)と,解剖学的に同側であるが空間的には反対側となる位置関係で模倣する場合(解剖模倣)がある。本研究は,この2種類の模倣について,動作を認知し行動表出するまでの脳内機構について明らかにし,動作模倣において重要な役割を果たす脳内部位を特定することを目的として実施した。 右利きの被験者11名に対し,示指と中指の単純かつランダムな指持ち上げ運動で構成された刺激画像を提示し,被験者は右手か左手でそれを模倣した。その際の脳活動をfunctional MRI(f MRI)を用いて計測した。f MRIデータの解析はSPM99を用い,機能イメージは頭部の動きに合わせて補正した。 その結果,解剖模倣と鏡模倣の主効果として両側中前頭回(右半球BA45/46,左半球BA44),両側中前頭回,左下頭頂小葉の活動が認められた。右前頭回は,運動抑制に関与することが先行研究で報告されていることから,刺激画像につられて運動しようとする手の動きを抑制していると考えるられる。また,左の下前頭回(BA44)や左下頭頂小葉の活動は,模倣時に活動するとされるmirror neuronの活動と考えられる。このneuronは,従来鏡模倣において活動するとされていたが,本研究では解剖模倣でよりその活動を強く認めた。これは,より自分にとって複雑な模倣に対応するためにmirror neuronが重要な役割を果たす可能性を示唆している。また,解剖模倣vs,鏡模倣の条件に左右手の条件を加えると,非利き手である左手実行時に左緑上回の活動が認められたが,これは自分の運動意図に関連した他者の運動分析を行っいたと考えられる。 以上より,非利き手における解剖模倣成功のためには,下前頭回を中心とした行動抑制と,下頭頂小葉などにおける精緻な運動分析が,重要な役割を果たすということが示唆された。
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