研究概要 |
生物・非生物の物品等が属する16カテゴリーを用いて,臨床現場で使用できる意味検査を作成した.各カテゴリーの物品について,線画呼称,定義呼称・口頭説明・聴理解(線画選択)・文字理解・書取を行って口頭言語と文字言語の両方で物品の意味について調べられるようにした.これは,失語症においてモダリティ別に意味知識ヘアクセスする機構を想定するときに有用な検査と考えられる.上記課題のほか,認知症患者における意味記憶障害も視野に入れ,意味障害のスクリーニングとして使用できる簡便な検査を検討した.後者のスクリーニング用検査は,(1)ターゲットと同時に使用する物品ないし同じ機能をはたす物品を選択する課題(高具象課題),(2)特定の季節や行事と関連する物品などを選択する課題(低具象課題)のほか,臨床でsemantic dementiaの検出に用いられることが多い(3)ことわざ補完課題で構成された.臨床現場では比較的短い時間で認知障害を検出することが望まれる.意味に関する検査で発表されているもの(吉野に2000など)はきめ細かく障害を検討することが可能と考えられるが,より幅広い対象者で意味障害を検出するには検査の簡便さも条件の一つになるごと推察される.意味記憶は膨大な情報量(知識)を処理・保存している機構と考えられ,その特性から少数の検査のみで障害を検出する難しさが存在する.意味障害検出の感度を高めるために,どういった意味システムの要素を選ぶべきか,さらなる検討が必要と考えられる.
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