研究概要 |
本研究モデルである片側脱神経横隔膜モデルは横隔神経切除により同側の横隔膜は麻痺を生じ不活動となるが,対側の横隔膜が収縮することにより呼吸に同期した間歇的ストレッチが負荷されると考えられている。この現象に着目し,片側脱神経横隔膜モデルを作成,横隔膜に対する変化および年齢の違いによる変化に差が生じるかどうかを生理学的,形態学的,生化学的に分析し,明らかにすることを目的とした。さらに,片側横隔神経切除を行なったラットに対し,トレッドミルによる走行運動を負荷し,脱神経横隔膜へのストレッチ効果を高め,効果の違いを比較検討した。 本年度は研究計画に従って,2年齢(老齢)ラットを飼育し,脱神経横隔膜モデルを作製,脱神経横隔膜の変化と過負荷された横隔膜の影響を分析する目的で実施した。 老齢ラットにおいては平成18年度よりリタイヤラットを購入,飼育し,当該研究で使用する週齢まで飼育を行なった。予定週齢に達した時点で脱神経横隔膜モデルを作製した。走行運動群には術後1週より本学所有の小動物用トレッドミルを使用し,前年度成熟ラットに行った運動プロトコルを参考に、トレッドミルによる走行運動を開始した。しかし老齢であったため,前年度のプロトコルには応答できず,速度15〜20m/min,20〜30分間,傾斜なし,6日/週を4週間の期間中に漸増的に負荷を増大した。なお,老齢ラットにおける運動強度を確認するため走行運動前後における血中乳酸値を追加項目として測定した。その結果4週間の走行運度により血中乳酸値は4.0±1.2から1.8±0.3まで低下し,運動による呼吸循環系へのトレーニング効果があったことを示した。 実験終了後,各群の横隔膜を採取し,生理学,組織化学,生化学的特性を分析した。現在詳細な実験結果については分析中であるが,走行運動により単収縮張力は上昇したが,収縮時間や弛緩時間には差が認められなかった。 また,形態学的特性ではすべての筋線維において増大を示した。 このように走行運動により横隔膜においてはトレーニング効果が認められた。これらについての知見を学科発表および学術論文として公表する予定である。
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