研究課題
若手研究(B)
下垂体から分泌される成長ホルモン(GH)は筋肉と骨量を増加し、また脂肪分解を促進して、健康の維持・増進に重要な役割を担っている。加齢に伴うGH分泌低下はソマトポーズとも呼ばれ、筋肉と骨量の低下および内臓脂肪蓄積型肥満を誘導し、老化を促進する因子となっている。グレリンは生体のエネルギー同化に機能する生理活性ペプチドであり、胃内分泌細胞と視床下部の神経細胞で産生され、迷走神経のグレリン受容体を介してGH分泌や摂食の元進に機能している他、末梢組織に直接作用し、細胞の分化・増殖およびアポトーシス抑制にも機能している。本研究では、成長ホルモン分泌を増大させる一過性漸増運動と長時間持久性運動が、血中グレリンに及ぼす影響について検討を行った。被験者(健常成年男性)は、漸増運動負荷試験と多段階漸増運動負荷試験から算出した50%最大酸素摂取量の強度で、60分間の自転車ペダリング運動を実施した。運動中に経時的に採血を行い、血糖値、血漿中のグレリン、GH、カテコラミンおよびインスリン濃度を測定した。これらの結果、運動中にグレリンは漸減する一方で、GH、エピネフリン、ノルエピネフリンは漸増した。以上のことから運動中のGH分泌にグレリンは関与していないことが明らかとなった。運動中の血糖値と血中インスリン濃度は一定であったことから、グレリンの低下は液性のエネルギー代謝情報とは直接関係が無いことが推察された。またグレリンはノルエピネフリンと負の相関関係があった。本研究での運動中のグレリン濃度の低下は、交感神経系による分泌調節もしくは、血流再分配による循環血中への放出減少、末梢組織での利用の充進のいずれかによるものであると考えられた。グレリン補充が、運動療法の有効性を高めるための有効な手段として利用できるかどうかに関して、さらに研究が必要である。
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