研究概要 |
女性の社会進出とともに食の外部化が急速に高まったが,これによってこれまで家庭の中で行われてきた食教育もその場を失いつつあり外部化してきており,学校教育においても食教育の必要性が高まってきている。主な受け皿となる家庭科においては,男女等しく食への関心を引き出し,学んだ知識が自身の食生活に活かされる教育内容の検討が必要になってきており,本研究では,学校家庭科食物分野における教育の改革の可能性について検討した。 本研究はH18・H19年度の2年計画によるものであり,H18年度の段階で,現在の小中学校家庭科調理実習の内容について,重複等があり見直しが必要なこと,理科の応用学習的要素を取り入れた調理実験の教育効果が,ある程度調理経験を積んだ女子において,より効果的であること等が明らかになった。また,男子の食への関心の低さが女子より家庭での調理経験が少ないことに起因することが推察可能となったため,H19年度ではこのこの点についてさらに追究することを試みた。すなわち,食への知識及び関心があまりないと判断された男子大学生を対象に,調理技術をあまり要さず行える菓子作りを題材として,調理実験と実習を兼ねた実践的テストを行い,その教育効果を検討した。結果は,調理による食材の変化や味の違いを理科で学んだ知識を利用して理論的に理解できたことの喜びを主な理由とし,食への関心が高まることが認められた。学校家庭科調理実習においては,必要な技術習得のための教育と並行して,理解できる楽しさが味わえることを主眼とした調理実験的要素も,食生活経験の少ない現在の子どもたちの食への関心を高め積極的に学ぶ姿勢を作りだすために必要であると考えられた。また,これらの調理実験の実践的検討内容と学校家庭科食物分野の教育の変遷については大学研究紀要として発表し,調理実験の運用の仕方について指針を与えることができた。
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