研究概要 |
現代人において,肥満,糖尿病,高脂血症などの生活習慣病が単独で発症する頻度は低く,複数が同時に発症することが多い。それぞれの疾病の程度が軽度であっても,重篤な動脈硬化症が誘導され,致死的な心筋梗塞や脳梗塞が発症する。このような病態をメタボリック症候群と呼び,その抑制は食生活学に課せられた重要な研究課題となっている。本研究は,日本人におけるメタボリック症候群を抑制する食品因子の探索とその抑制機構の解明を行うことを目的に,2型糖尿病を自然発症的に発症し,同時に高脂血症と内臓脂肪蓄積型肥満を呈するOLETFラットを日本人のメタボリック症候群のモデル動物として用い,日本人の摂取する機会の多い,植物性タンパク質などを与え,血清脂質濃度や血糖値などの変動を指標に検討を行った。その結果,OLETFラットの体重は正常系統に比べ有意に高い値で推移したが,摂取タンパク質の違いによる有意な差はみられなかった。OLETFラットの血清コレステロールと中性脂肪濃度はカゼイン摂取時では正常系統に比べ有意に上昇したが,小麦グルテン摂取により正常系統と同程度まで有意に低下した。また,リアルタイムPCR法を用いて肝臓の脂質代謝関連遺伝子の発現量を測定したところ,小麦グルテン摂取により,脂肪酸合成系遺伝子の発現がカゼイン摂取時に比べて有意に低下していた。また,その作用機序について検討を進めたところ,脂肪酸合成系遺伝子の発現低下には,転写因子であるSREBP-1cの発現抑制が最も強く関与していることが明らかとなった。また,コレステロール排出に関わるABCG5及びABCG8の発現の低下しており,これらの低下が肝臓におけるコレステロール蓄積に関与しているものと示唆された。
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