本研究は、「質問力」を育みたいという教育実践の場のニーズに応え、実践との協同を通して「教授法・カリキュラムの開発」を行う研究である。長期的なゴールとしては学校レベルでのカリキュラム開発を想定しているが、本研究では、学級・学年レベルでの質問力育成の可能性、あるいは指導法の開発、カリキュラムの改善に役立つ情報を得ることを短期的なゴールとして設定した。 ここでは、主な研究成果について、4点その概要を紹介する。第一に、先行研究を参考に、質問力を「問題発見」「思考(理解)」「コミュニケーション」の3つの機能と関連づけて、質問力を再定義した。第二に、本研究では「再生刺激法」について先行文献を整理し、精緻化を行い、児童の学習活動を捉えるために利用した。第三に、実践研究として、小学校で授業実践研究を実施した。ここでは、1学年4学級を対象にデータ収集を行った。焦点化された授業では、再生刺激法を利用し、児童の認知過程を取り出し、分析を行った。その結果、教室構造の認知や児童の授業中における動機づけの在り方など、児童の授業中の学習動機に関する準備状態の違いが、児童の質問生成を引き出せるかどうかに関連していることが示された。また、学級間の差もみられることがわかった。第四に、本研究で得られたデータやその分析結果等を踏まえて、やる気を引き出す授業構造に注目し、質問力を育成する指導法・カリキュラムについて提案した。 以上、本研究の成果について一部を概括した。なお、そのほかの結果についても、分析を継続して、改めて論文化し報告する予定である。
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