研究概要 |
1.鉄は,海洋表層における必須微量元素として生物生産を制限する因子であり,地球表層の炭素循環に大きな影響を及ぼしている.海水等の自然水中で安定な化学種は三価鉄である.二価鉄は水中の酸素等によって速やかに酸化されるため不安定であり,二価鉄を精確に定量することは極めて困難である.本研究では,海洋等の水圏における二価鉄の定量分析法の開発を目的として,二価鉄に対して高選択的に錯形成する配位子を用いた固相抽出分離を検討した. ・二価鉄と安定な錯体を形成する有機配位子(1,10-フェナントロリン,フェロジン,ビピリジン,ターピリジン)を用いた固相抽出を比較検討した結果,ターピリジンを用いた場合に最も効果的に二価と三価の鉄を分離できることが分かった.ターピリジンを用いた固相抽出により,自然水のpH6-8を保った状態で二価鉄を100%回収し,かつ三価鉄を初量の数%以下に抑える分離条件を確立した.主な成果は,「11.研究発表」の学会発表において公表した. 2.海洋植物は鉄以外にも多くの微量元素を必要とする.生物活性微量元素は,植物プランクトンの生理活性や海洋生態系における群集構造に影響する.このため,鉄を含めた他の微量元素の研究も重要であり,これらに関する研究を実施した. ・ベーリング海の大陸棚における生物活性微量元素の断面分布を観測した. ・懸濁粒子態生物活性微量元素群の同時分析法を開発した. ・北太平洋亜寒帯域における不適合元素の分布を解明した. これらの成果は以下の「11.研究発表」の雑誌論文に掲載された.
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