研究概要 |
まず,初年度に得られた研究成果のまとめとして,レゾルシノールと触媒のモル比が200と400の製膜液から作製したナノポーラスカーボン膜(RC200,RC400と略す)について,詳細な解析を行った。TG-DTA測定からは,RC200とRC400は同じ熱分解挙動を示し,1000℃焼成後の炭素残量は約40%であり,元素分析から炭素含有率は92-93%であることが分かった。SEM像から,作製後の膜は欠陥のない緻密層で成り立っており,その膜厚は165-178μmであることを示した。吸着測定の結果,RC200およびRC400はIV型の吸着等温線を示し,細孔径がそれぞれ5.5nmと14nmに高度に発達したメソ孔を持つことを明らかにした。H2・He・CH4・N_2・CO_2・CF_4について透過挙動の評価を行ったところ,RC200およびRC400は,気体の透過速度が平均圧に依存せず,透過気体の分子量の-1/2乗に比例するKnudsen式と一致した透過挙動を示したことから,欠陥のないメソ孔が支配的なカーボン膜であることを初めて明らかにした。以上の研究成果について,アセアン国際膜学会にて発表を行い,論文としてまとめてCarbon誌に投稿し,アクセプトされた。さらに,ナノポーラスカーボン膜の総説の一部として成果を発表し,膜雑誌に掲載された。 浸透気化分離によるエタノール選択分離について,ナノポーラスカーボン膜の表面特性および細孔特性が透過挙動に与える影響を解明するために,蒸気/ガス混合透過測定を行い,ナノパームポロメトリ法による解析を行った。測定には,蒸気として水および疎水性モデル物質としてヘキサンを選択し,混合ガスとしてヘリウムを用いて行った。細孔径の小さいナノポーラスカーボン膜は,ヘキサンを蒸気とした場合に毛管凝縮現象が水の場合より低い相対圧で開始し,ナノポーラスカーボン膜が疎水的であり,浸透気化分離におけるエタノール選択性が高い傾向があることを明らかにした。また,浸透気化分離における有機酸の影響を評価したところ,膜性能の低下は見られず,ナノポーラスカーボン膜はバイオエタノールの分離濃縮に適していることを確認できた。
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