研究概要 |
1.蛍光性オリゴピリジンの設計とその特性解析 6-位にアミノ基を導入した2,2':6',2"-テルピリジン(tpy)は、溶液中で効率よい青色蛍光を示すことから、本年度はアミノ基をアルキルまたはフェニル置換した誘導体について単結晶を種々作成し、ナノ集積構造と固体発光特性との関連を検討した。その結果、アミノ基水素をすべてアルキルまたはフェニル置換した誘導体はいずれも強い青色発光を370nm付近に示した。また、発光波長のナノ集積構造依存性や溶液系で見られた明確な置換基依存性は確認されなかった。一方、アミノ基水素を有する誘導体はほとんど発光を示さなかった(Φ<0.05)。結晶構造解析からアミノ基水素とピリジン環窒素との水素結合がいずれの誘導体についても確認され、これの関与する無放射失活過程が発光消失の要因と推定された。 以上の結果から、6-アミノ置換tpyの固体発光は溶液系とは異なる挙動を示し、特にアミノ基水素を介した水素結合形成の有無が発光効率に大きく影響することが明らかとなった。 本成果の一部は英国化学会Org. Biomol. Chem.誌においてFront Cover Pictureに選定された。 2.結晶構造に大きく依存する固体ESIPT発光 分子内水素結合の関与する励起状態分子内プロトン移動(ESIPT)蛍光を示す2-(2'-ヒドロキシフェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン(1)が、二種類の結晶構造をとり、互いに大きく異なる固体ESIPT発光〔495 nm(青緑)および530nm(黄色)〕を示すことを見出した。化合物1は分子パッキングに依存して異なる固体ESIPT発光を示した初めての系であり、ESIPT機構に基づいたナノ集積構造が誘起する大きな発光変化を示す新規固体発光材料に向けた重要な知見である。
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