研究概要 |
本研究課題は,トリフェニルメタン(TPM)を骨格とするアミド分子の自己集積能を利用した超分子ポリマー合成と,その分子へのレドックス活性部位の導入,レドックス応答をシグナルとするセンシング材料への応用を目的とした。平成19年度はTPMトリアミド(TPM-amide)の分子構造と集積構造の相関に関する考察を継続した。前年度の研究結果から,一定以上長いアルキル側鎖をもつ場合にTPM-amideの結晶系は三方晶系から六方晶系へと劇的に変化し,それに伴い結晶のモルフォロジーもプリズムからファイバーへと変化することが分かっていた。粉末X線回折パターンのリートベルト解析により,分子集積構造のTPM骨格を決定しようと試み,現在も解析を継続中である。一方でTPM骨格をもつレドックス応答系として4,4',4''-trihydroxytriphenylmethane (TPM-OH)をもちいたレドックス活性メタロポリマー系への展開を進めた。これは,前年度の研究により(1)レドックス部位の導入により材料に電位応答が見られたこと,(2)分子の集積構造を乱すことなく機能部位を導入する上でイオン的相互作用を利用するのが有効とわかったこと,を受けている。Mannich反応により,TMP-OHにアミノメチル基を導入して効果的な多座配位子を合成する手法を確立し,その錯形成能を確認した。金属イオンにより配位子が架橋する構造を形成できる可能性が示されたが,さらに安定度定数を増大させるための分子設計を行い,合成・精製を行った。金属-配位子間の電子的相互作用を調べる第一段階として,配位子本来のレドックス特性の知見を得るためレドックス不活性な亜鉛イオンをもちいて錯体を合成し,電気化学的挙動を調べた。
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