研究概要 |
前年度,アミノ酸とシアニン色素について"拡張分子ペアリング法"を適用し,アミノ酸の側鎖構造に依存したナノ組織体の構築ならびに高次分子集合体形成に基づく新しいセンシング技術の開発を行った.本年度は,相互作用の組成比や外部刺激(光・熱)に対する応答性について詳細に検討した. グルタミン酸とo-フタルアルデヒド(OPA)をチオール化合物(HS(CH_2)_2SO_3^-)の存在下,室温で混合することによって,アミノ基をイソインドール基へ誘導化した.これとシアニン色素との相互作用の組成比を調べるために,Job's plotを行った.その結果,グルタミン酸誘導体とシアニン色素は,1対4の組成比で相互作用していることがわかった.これは,単純な静電相互作用から予測される組成比(1対3)とは異なることから,ファンデルワールス力,芳香環のスタッキング,疎水性相互作用などの複数の相互作用が関与していることが示唆された.また,チオール化合物の構造によって,会合モードを変調することにも成功した. 室温において,グルタミン酸誘導体とシアニン色素から形成されるナノファイバーに対して,光照射を行ったところ,ナノファイバーが崩壊した.これは,シアニン色素が光分解されたためである.一方,ナノファイバーの水分散液を55℃まで加熱すると,構成分子に解離し,室温まで冷却するとナノファイバーが再構築されることがわかった.つまり,グルタミン酸誘導体とシアニン色素から形成されるナノファイバーは自己組織性を有することが明らかとなった.
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