研究概要 |
光硬化性樹脂にフェムト秒レーザーを集光すると光強度の高い焦点でのみ2光子吸収が起こり,硬化スポットが得られる.その焦点を3次元走査するとナノ/ミクロンスケールで任意形状の3次元ポリマー構造体を作製できる.3次元ポリマー構造体に無電解めっき法により金属をコーティングすると3次元金属構造体が得られる.無電解めっき法による金属コーティングは下地の化学的性質に大きく依存し,一般に無電解めっき法でポリマーへ金属をコートするためにはスズやパラジウムなどで前処理を行う必要がある.昨年度,めっき前処理が不要な金属の付着し易い樹脂として市販の光硬化性樹脂にメタアクリルアミドを混ぜた改質樹脂を開発した.また,それを従来樹脂と併用することによって選択的に改質樹脂のみが金属でコートされることを確認した.本年度は,照射レーザー条件を最適化し,本手法により3次元金属/ポリマーハイブリッド微細構造を作製した.造形用光源には波長796nm,パルス幅140fs,平均出力1.4W,繰返し1kHzのチタンサファイアレーザー(再生増幅器)を用いた.アッテネータを用いて造形に適当な出力としたレーザーをマイクロレンズアレイを用いてマルチスポットを創製し,対物レンズにより光硬化性樹脂中へ集光した.従来樹脂および改質樹脂を用いて3次元ポリマー構造を作製し,洗浄後,硝酸銀水溶液中に数時間浸した。サンプルを洗浄し,アンモニア性硝酸銀水溶液中に浸し,還元剤としてグルコース水溶液を加えた.洗浄・乾燥後,走査型電子顕微鏡により観察した.その結果,改質樹脂部分のみが銀でコーティングされた3次元銀/ポリマー構造体を確認できた.その最小金属線幅は約300nmであった.以上から,本手法によりサブミクロンの分解能で3次元金属/ポリマーハイブリッド構造を作製できることが示せた.
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