研究概要 |
DNAアレイ等による遺伝子の網羅的なプロファイリング解析研究では,サンプルの標識化量がmRNAの配列に依存してしまうため,mRNAを定量的に検出することは困難である。また microRNAに代表されるnon-codingRNAの解析についても,同様に細胞内存在量変化の解析は困難である。本研究課題では上記問題点を克服すべく,標識分子によりRNAの配列末端部位のみを選択的に標識化する技術の確立を目標とし,このための新規なRNA末端標識化試薬の開発を進めた。研究2年目である本年度では,昨年度の研究結果を基に化合物の更なる改良を行い,より実用的な標識化試薬の開発を目指した。 1.改良型標識化試薬の分子設計,および化学合成 疎水性相互作用や静電的相互作用など,核酸分子の塩基部およびリン酸部位との問に働くと予想される分子間相互作用を利用することで,効率的にRNA末端部位を認識して標識化することが可能であると考え,新規標識化試薬の分子設計を行った。昨年度の研究では,標識化試薬(反応基としてアミノ基を有する)への疎水性芳香族基の導入がその標識化効率を大きく向上させることを明らかにした。本年度は更なる反応効率の改良を目的に,標識化試薬へのグアニジノ基の導入を行った。グアニジノ部位の化学合成は,提案者が以前に開発した手法により達成した。 2.改良型標識化識薬の評価,および核酸構造が反応効率にぼす影響の解析 合成した新規化合物について標識化効率を検討した。標識化反応には化学合成した短鎖RNAを用い,またRNAが二本鎖を形成した時の影響につても検討した。その結果,グアニジノ基の導入が反応効率を大きく上昇させることを見出し,特に疎水性芳香族基と組み合わせた試薬が高い反応性を有していることを明らかにした。また二本鎖RNAとの反応性の比較により,化合物の平面構造も重要であることが示された。以上の研究により優れた反応性を有するRNA末端標識化試薬の開発を達成できた。
|