研究概要 |
日本の羅漢図は中国画の影響のもとに制作されたと理解されている。実際,寧波地方で制作された羅漢図や十王図と鎌倉時代以降に日本で制作された作例には共通の図像が多く見いだせる。しかし,舶載画は中世においても稀少なものであり,舶載画の写し,粉本等を参照して制作された事例も多かったと推測される。日本で制作された羅漢図や十王図が現在では失われてしまった宋・元代の仏画やその受容の諸相を探る手がかりを潜在させていることは明らかであり,本研究は特に図像のバリエーションの豊かな羅漢図の図像,表現等のデータを抽出,収集することを主な目的として行った。 本年度は前年度に続き,主に次のような調査,研究を行った。 1.鎌倉地方(円覚寺・建長寺等)に伝来する舶載仏画の作品調査を行った。詳細なデータを採取,あわせて撮影を行った。特に従来,出版物等でカラー図版をみることができなかった円覚寺所蔵五百羅漢図(元代。うち一部は日本の補作)の全幅の写真を展覧会図録に掲載した。 2.舶載羅漢図および日本で制作された中世期の羅漢図の諸作例について,美術全集,報告書,図録等の刊行物や所蔵先の写真資料などからデータを収集した。 3.図像の規範になったとみられる宋,元代の舶載羅漢図を中心として,東京,京都等において作品調査を行った。 4.「開館四十周年記念特別展 宋元仏画」(会期:2007年10/13〜11/25)において,宋・元代の仏画と金大受様の十六羅漢図(神奈川県立歴史博物館所蔵)を併せて展示。本研究の成果報告書を兼ね,図録を刊行した。 ※梅沢恵「異国の仏を請来すること」(図録122〜127頁所収)
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