研究概要 |
平成19年度は、昨年度に引き続き、日本語の尊敬語に焦点を当て、その統語的・形態的研究を行った。特に19年度は、尊敬を表す形態素「お〜になる」の統語的・形態的な派生方法を詳細に在検討した。そのことにより、日本語の尊敬語は一致現象の1つとして見なすことができるかどうかという問いに対する1つの答えを提示しようと試みた。その結果、以下のことが明らかになった。 1.Suzuki(1989),Toribio(1990) などで論じられていることに反して、「お〜になる」の形態的構造が「お+名詞(動名詞)+に+なる」という構造ではなく、Harada(1976)が論じていたように、「お+動詞+に+なる」という構造が正しいということが明らかになった。 2.Suzuki(1989),Toribio(1990),Ivana and Sakai(2007)が論じているような「お」が一致を表す形態素ではないことが明らかになった。 3.尊敬の「お〜になる」は、実は高い位置にあり、それが、Affix Hoppingという操作によって、低い位置に現れることが明らかになった。 4.従って、「お〜になる」は、circumfixであり、それは一致(Agreement)を表す形態素であることがわかった。 以上により、平成18年度に引き続き、日本語の尊敬語は、英語など諸言語に見られるような、一致現象の一種であるという新たな証拠を発見することができた。またその成果報告を海外の雑誌に投稿した。
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